喜劇役者、俳優、タレントとして、長年にわたりお茶の間を楽しませてきた伊東四朗さん。
「てんぷくトリオ」で人気を博し、「電線音頭」のベンジャミン伊東、『伊東家の食卓』のお父さん役、そして『おしん』『おかしな刑事』などの俳優としても活躍しました。
今回は、そんな伊東さんを取り巻く『家族』の物語です。

◆家族構成
伊東四朗さんは、5人きょうだいの4番目、三男として生まれました。
父親は職人の伊藤金三郎(いとう・きんざぶろう)さん。
母親については、詳しいプロフィールは公表されていません。
きょうだいは兄2人、姉1人、妹1人がいます。
その中で次兄にあたるのが、教育評論家として活動した伊藤竹三(いとう・たけぞう)さんです
1966年〈昭和41年〉、29歳のときに冷子(れいこ)さんと結婚。
夫婦の間には3人の息子が誕生しました。
次男は俳優の伊東孝明(いとう・たかあき)さんです。
さらに伊東さんには4人の孫がいます。
◆父親は歌舞伎好きの職人
伊東四朗さんの父親は、1896年〈明治29年〉生まれの職人でした。
昔気質の職人でありながら、歌舞伎や小唄を好む粋な一面もあったそうです。
着流し姿で三味線を弾き、小唄を唸る父親。
伊東さんは幼い頃から父親に連れられて歌舞伎座へ通いました。
後年、父親の影響について、

歌舞伎は親父の影響かな
と振り返っています。
芸能の世界とは無縁に見える職人の家庭で育ちながら、幼い伊東さんの身近には、すでに「芸」がありました。
それは後の人生を考えるうえで、忘れられない原点だったのかもしれません。
◆兄に「おまえ出ろ」と言われて初舞台
伊東さんの芸能人生には、もう一人、大きな影響を与えた家族がいます。
13歳年上の長兄です。
戦争末期、一家は母親の実家がある静岡県掛川市へ疎開。
そこで復員した長兄が、素人劇団を結成しました。
そして弟の伊東さんに、
子役がほしいから、おまえ出ろ
と声をかけます。
伊東さんは小学4年生で、浮浪児役として初舞台を踏みました。
公式サイトでは、1949年〈昭和24年〉、12歳のときの出来事として紹介されています。
本人にとっては、兄に頼まれて出演した一舞台だったのでしょう。
しかし、その舞台が、後に69年にも及ぶ芸能人生の入り口になりました。
◆妻・冷子さんとの結婚
伊東四朗さんが結婚したのは、1966年〈昭和41年〉。
妻は冷子(れいこ)さんです。
一般の方のため、詳しい生年月日やプロフィールは公表されていません。
結婚当時、伊東さんは29歳、冷子さんは20歳でした。
馴れ初めを尋ねられた伊東さんは、

謎ってことにしといてください
と笑って答えています。
冷子さんは、伊東さんの仕事に口を出すこともなかったそうです。
出演したドラマやコントを一緒に見ることはあっても、感想は言わない。
一方、伊東さんが舞台に立つときは、初日に必ず見に来てくれました。
長年連れ添った夫婦でありながら、伊東さんは、

いまだによく把握できていないのです、女房のことは
と語っています。
多くを語らない妻だからこそ、舞台に立つ夫を静かに見続けてきたのでしょう。
◆3人の息子を育てた父親
伊東四朗さんと冷子さんの間には、3人の息子がいます。
長男は1967年〈昭和42年〉生まれ。
次男は俳優の伊東孝明(いとう・たかあき)さんで、1971年〈昭和46年〉5月4日生まれです。
三男については、詳しいプロフィールは明らかになっていません。
伊東四郎さんは仕事だけに生きた父親ではありません。
3人の息子が幼かった頃には、子育てにも参加しました。
本人によると、

おしめも替えたし、風呂にも入れた
といいます。
仕事で帰宅したとき、子供たちがすでに寝ていると、

もう、ガッカリで
と感じたそうです。
次男の孝明さんも、父親について、
家にいるときは寡黙だった
と振り返っています。
大きな声で子供を叱ることはなく、参観日や運動会には必ず来てくれたそうです。
遠足で息子たちの列が家の前を通ったときには、長い行列の中から孝明さんを探し、手を振ったり、8ミリカメラを回したりしていました。
テレビの中では多くの人を笑わせる伊東さんも、家では息子の姿を探す父親だったのです。
◆息子も俳優の道へ
次男の伊東孝明さんは、父親と同じ俳優の道へ進みました。
親子で同じ世界に入ったからこそ、伊東さんには複雑な思いもあったようです。
2022年のインタビューでは、親子で芝居をすることについて、

ほかの芝居やるときよりも、何よりも勇気がいりますね
と語っています。
同じ俳優という仕事だからこそ、息子の演技を見る目にも、父親としての感情が加わります。
それでも、父から息子へと「役者」という道が受け継がれました。
父親にとって、息子が同じ世界で歩き始めることは、誇らしさと緊張感が入り交じる出来事だったのでしょう。
◆4人の孫を持つ「おじいちゃん」
伊東四朗さんには、4人の孫がいます。
2021年のインタビューでは、孫たちと一緒に食事をすることが楽しみだったと語っています。
コロナ禍でなかなか会えなくなった時期には、

孫と会えないっていうのはね。本当に「コロナめ!」と思っていますよ
と、寂しさをにじませました。
久しぶりに会った孫の一人は、いつの間にか伊東さんの身長を追い越していたそうです。
少し会わない間に大きくなっていく孫の姿。
伊東さんにとっては、芸能界で過ごす時間とはまた違う、家族の成長を感じる瞬間だったのでしょう。
◆エピローグ
父親に連れられて歌舞伎を見た少年。
兄から「おまえ出ろ」と言われて舞台に立った少年。
その少年は、やがて日本を代表する喜劇役者「伊東四郎」となりました。
そして2027年6月15日ーー。
伊東さんは90歳の誕生日を迎える日に、69年に及ぶ芸能活動に幕を下ろします。
引退を決めた伊東さんに、家族も賛成してくれました。
引退に際し伊東さんが語ったのは、

これからは良いじいさんになろうと思っています
という言葉。
伊東四朗さんの人生の次の舞台は、家族と過ごす穏やかな時間なのかもしれません。
◇脚注
- 伊東四朗オフィシャルウェブサイト「伊東四朗ヒストリー」
- 女性自身 2021年3月1日「伊東四朗が明かす父の顔『おしめも替え、風呂にも入れました』」
- 女性自身 2021年3月1日「伊東四朗が振り返る芸歴60年間…就活全滅で演技の世界へ」
- テレビ朝日 2026年10月1日「伊東四朗、来年6月の卒寿をもって芸能活動を引退」
- テレビ朝日 2026年10月3日「伊東四朗『これからは良いじいさんに!』ファンにメッセージも」
- 文化放送 2026年10月1日「喜劇役者・伊東四朗さんが2027年6月の90歳誕生日をもって芸能活動を引退」



コメント