【硤合憲三】の家族~甥・硤合真大さんが語る「いつかノーベル賞を取れると思っていた」叔父の素顔

有機合成化学の研究者として、世界的な業績を残してきた硤合憲三(そあい・けんそう)さん。

2026年〈令和8年〉10月7日、硤合さんはフランスの化学者、アンリ・B・カガンさんとともにノーベル化学賞を受賞することが決まりました。

今回は、そんな硤合さんの「家族」と、その研究人生を紹介します。

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◆家族構成

硤合憲三さんには、姉がいます。

姉の息子で、硤合さんの甥にあたるのが、硤合真大(そあい・まさひろ)さんです。

硤合憲三さんの妻や子供、父母などについては、現時点で氏名などを確認できる信頼性の高い公開情報が見つかっていません。

一方、甥の真大さんが語った証言からは、研究者として世界的な名声を得る前の硤合さんの、身近な家族の中での素顔が見えてきます。

◆広島県府中町から研究者の道へ

硤合憲三さんは、広島県府中町で生まれ育ちました。

高校は広島大学附属高等学校。

その後、東京大学理学部で化学を学び、大学院へ進学。

1979年〈昭和54年〉に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了し、理学博士の学位を取得しました。

大学院では、世界的な有機化学者として知られる向山光昭(むかいやま・てるあき)さんの指導を受けています。

博士号取得後は、日本学術振興会奨励研究員を経て、アメリカのノースカロライナ大学チャペルヒル校で博士研究員として研究を続けました。

そして1981年〈昭和56年〉、東京理科大学理学部応用化学科の講師に就任。

1986年〈昭和61年〉に助教授、1991年〈平成3年〉に教授へ昇任しました。

以来、硤合さんは有機合成化学を中心に研究を続けます。

◆甥・硤合真大さんが語った叔父の素顔

ノーベル化学賞の受賞が決まった日、硤合さんの甥にあたる硤合真大さんが、地元・府中町で取材に応じました。

真大さんは、硤合さんの姉の息子にあたり、2026年〈令和8年〉10月7日時点で46歳。

叔父について尋ねられると、

陽気で明るい性格

と振り返りました。

また、硤合さんは本をよく読む人だったといいます。

真大さん自身も、叔父と一緒に書店へ出かけたことを覚えています。

一緒にキャッチボールをしたり、電車に乗ったりしたことも、幼い頃の大切な思い出です。

世界的な研究者として知られる硤合さんですが、甥の記憶に残っているのは、研究室で難しい化学を研究する姿だけではありません。

本を読み、書店へ出かけ、甥とキャッチボールをする。

そんな普通の叔父の姿でした。

受賞決定後、硤合さん本人とはまだ連絡が取れていないという真大さん。

それでも、

研究が一つの形となって世界で評価されたのだと思う。「おめでとう」と伝えたい

と、喜びを語りました。

◆「右手」と「左手」の謎

硤合さんの研究を語るうえで欠かせないのが、キラリティーです。

分子の中には、右手と左手のように、鏡に映した関係にあるものがあります。

このような鏡像関係を持つ分子は「鏡像異性体」と呼ばれます。

形はよく似ていても、生体内ではそれぞれ異なる働きをすることがあります。

そして生命の世界では、アミノ酸や糖などの分子が、右手型と左手型の両方ではなく、ほぼ一方の型に偏って存在しています。

この状態をホモキラリティーと呼びます。

なぜ生命は、一方の鏡像体を選んだのか

これは、生命の起源とも関係する長年の科学的な謎でした。

日本学士院は、硤合さんの研究について、このホモキラリティーの成立起源を考えるうえで重要な一歩を記したと評価しています。

◆「硤合反応」の発見

硤合さんは、長年にわたって不斉合成の研究に取り組みました。

そして1995年〈平成7年〉、硤合さんらは、不斉自己触媒反応を世界で初めて報告しました。

この反応では、化学反応によって生まれたキラルな生成物が、自分自身と同じ性質を持つ分子を作る反応を促進します。

しかも、わずかな鏡像体の偏りを大きく増幅することができます。

この反応は現在、硤合さんの名前から**「硤合反応(Soai reaction)」**と呼ばれています。

1995年に発表された研究成果は、後のキラリティー研究に大きな影響を与えました。

その後も硤合さんは、不斉合成やホモキラリティーの起源について研究を続けます。

長い年月をかけて積み重ねられた研究が、やがて世界的な評価につながっていきました。

◆日本学士院賞、瑞宝中綬章を受賞

硤合さんの研究は、国内でも高く評価されています。

2000年〈平成12年〉、井上学術賞、日本化学会学術賞を受賞。

その後も有機合成化学協会賞、文部科学大臣表彰科学技術賞、紫綬褒章、東レ科学技術賞など、数々の賞を受けています。

2011年〈平成23年〉には、第63回日本化学会賞を受賞。

さらに2023年〈令和5年〉には、長年の研究・教育活動が評価され、瑞宝中綬章を受章しました。

2025年〈令和7年〉、日本学士院賞を受賞。

研究題目は、

不斉自己触媒反応の発見とホモキラリティーの成立起源に関する研究

でした。

日本学士院は、硤合さんの発見した反応について、不斉識別能、自己触媒能、不斉増幅能の三つを兼ね備えている点を評価しています。

◆2026年、ノーベル化学賞

そして2026年〈令和8年〉10月7日。

硤合憲三さんの名前が、世界に知られることになります。

ノーベル化学賞の受賞が決定したのです。

共同受賞者は、フランスの化学者アンリ・B・カガンさん。

受賞理由は、

不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見

です。

ノーベル委員会によれば、硤合さんらの研究は、分子の鏡像関係を理解し、一方の形を選択的に作り出す化学の発展に貢献しました。

医薬品などでは、同じ化学式を持つ鏡像関係の分子でも、生体内で異なる作用を示すことがあります。

そのため、必要な鏡像体を選択的に作る技術は、現代の医薬品開発にも重要な意味を持っています。

◆エピローグ

ノーベル化学賞の受賞が決まった2026年〈令和8年〉10月7日——。

広島県府中町の実家前で、硤合憲三さんの甥・硤合真大(そあい・まさひろ)さんが、叔父の思い出を語りました。

陽気で明るく、本をよく読む人。

一緒に書店へ出かけ、キャッチボールをし、電車にも乗った。

世界的な研究者として知られる硤合さんにも、甥と過ごした家族の時間がありました。

そして真大さんは、叔父について、

いつかノーベル賞を取れると思っていた

と話します。

その言葉には、研究者としての硤合さんを、長年そばで見てきた家族だからこその確信があったのかもしれません。

探究心を持ち、それを継続する人

甥が語ったこの言葉こそ、硤合憲三さんの研究人生を最も端的に表しているのかもしれません。

ノーベル賞の受賞を受けても、硤合さんの探究心は止まることはありません。

◇脚注

  1. 日本学士院「日本学士院賞授賞の決定について」2025年3月12日
  2. 有機合成化学協会誌「硤合憲三先生に日本学士院賞」2025年6月
  3. 東京理科大学「硤合研究室」
  4. 広島ホームテレビ「速報 ノーベル化学賞に東京理科大学名誉教授の硤合憲三さん 広島県府中町出身」2026年10月7日
  5. Reuters「Nobel chemistry prize goes to pair who solved mystery of ‘mirror image’ molecules」2026年10月7日
  6. FNNプライムオンライン「ノーベル化学賞受賞決まった硤合憲三名誉教授とは」2026年10月7日
  7. RCC「『いつかノーベル賞を取れると思っていた』親族も喜び語る ノーベル化学賞に選ばれた硤合憲三さん 地元・広島からも『おめでとうと伝えたい』」2026年10月7日

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