元少年Aの『家族』~普通の父、厳格な母、事件の引き金は祖母の旅立ち

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「少年A」ときいて、真っ先に思い浮かぶのは、神戸連続児童殺傷事件の犯人・元少年Aではないでしょうか。

今回は、神戸事件の元少年Aの『家族』にスポットを当て、事件を違う視点から見ていきたいと思います。

◆普通の父親

元少年Aの父親は、奄美諸島の出身で、身長160cm前後。

浅黒い肌に、メッシュのように白くなった前髪が特徴の男性でした。

あれほどの罪を犯した少年の父親ですから、よほど酷い子育てをしたのだろうと想像されますが、実際は違います。

無口ですが、思春期の息子に目配りをし、節目節目にはきちんと息子に助言や声掛けを行うような、子煩悩の父親でした。

父親は昔から泣かない人で、Aが逮捕されて面会した時も、父親はきつく唇を閉じ、じっと何かを耐えているように見えたそうです。

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2004年7月、少年院を仮退院した元少年A は、父親と山奥のコテージで、二日間共に過ごす機会が与えられました。

父親は、Aに「一緒に暮らさへんか?」と問いかけます。

それに対し、Aは、以下のように返答しました。

もし一緒に生活している時に、ニュースなどで自身の事件が報道された時、みんなの表情が凍りつく事に耐える自信がないから、少し離れたところから見守ってほしい

そして、Aは、事件後初めて父親に謝罪しました。

幸せな5人家族やったのに、自分が生まれてきたせいで、こんな事になってしまった。父さんの息子で、本当にごめん。

父親は、声を殺して泣き始めました。

この日が、元少年Aが父親と会った、最後の日となりました。

◆厳格な母親

元少年A の母親は、長男に当たるAの誕生を親戚ともども大喜びし、離乳食をすべて手製にするなど、丁寧に子育てをしました。

ただ、Aが1才になり次男が誕生した頃から、母親には余裕がなくなり、彼を突き放すように育てたといいます。

また、母親は几帳面な性格で、Aが幼児期より、食後の食器の下げ方や敬語の使い方など、かなり厳格に教育してきました。

さらに三男が生まれてからは、睡眠不足もあって、Aにとって母親は「いつもイラついて」いる人でした。

元少年Aの欲求不満の「はけ口」は弟に向かい、兄弟喧嘩になると母親はAに体罰を加え、Aは母親を恐れるようになっていきます。

母親はAにとって、安心を与えてくれる「安全基地」ではなかったのです。

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元少年Aが事件を起こし、精神鑑定が始まって1ヶ月がたったころ、突然母親と父親が面会に来たことがありました。

母親と父親は、犯罪者に成り下がったAに対して、いつもと変わらず優しい言葉を投げかけてくれます。

しかし、Aは

ブタ野郎!カエレッ

と、母親に向かって大きな声で叫びました。

両親が帰ってから、元少年Aは後悔し、3日後、再び母親と面会をする事になります。

そして、元少年Aは母親に謝罪し、母親も本音をぶつけてくれた息子の態度に嬉しさの感情を抱いていました。

元少年Aは母親から愛され、そしてAは、今でも母親が好きだと言っています。

◆事件の引き金は祖母の旅立ち

元少年A の話で出てくる祖母は、同居していた奄美出身の祖母です。

奄美出身なので、おそらく父方の祖母なのでしょう。

そりが合わなかったのか、母親と祖母は、

「Aに厳しすぎる」「子どもの育児に口出しするな」

というケンカを、よくしていたそうです。

祖母は元少年Aにとって、両親以上の存在で、この世で一番愛する存在でした。

学校で目立たない存在で、孤立していたAを、全て受け入れ、優しく包み込んでくれたのが祖母だったのです。

そんな祖母ですが、元少年Aが小学4年生の終わりの時期に、体調を悪くし入院。

小学5年生になる頃、亡くなってしまいました。

祖母がいなくなったことで、元少年Aの心は、絶望の海へと漂流をはじめ、興味の対象はナメクジから蛙、ネコ、人へと移っていきました。

奇しくも最愛の祖母の死が、事件を起こす引き金となってしまったのです。

◆弟たちとの関係

元少年A には年子の弟が2人います。

幼少期は、毎日のように玩具の取り合いで、弟二人と喧嘩をしていました。

弟二人も結束してAに対抗するので、必ずしもAが悪い訳ではありませんでしたが、下が泣くので必然的に兄のAが叱られていました。

しかし、元少年Aが事件を起こし、少年院へ弟二人が面会に来たときは、事件を起こしたことに対する、切なる謝罪の気持ちを伝えています。

また、Aが溶接工の会社に入社し、カタコトの日本語を操る中国人の後輩が出来たときは、「弟に似ている」と可愛がりました。

弟は兄に対し、

「どんなことがあっても大事な兄貴!」「恨んでない」

とポジティブな言葉を送っています。

◆まとめ

これまで見てきた通り、元少年A の家族は、特別にひどい訳でも、破たんしているわけでもありません。

むしろ、Aの父親が言っていた

うちは金持ちやないけど、貧乏でもない。ほんま、平凡やなあ

という言葉通りの家庭でした。

しかし、そんな平凡な家庭でも、元少年Aという特大級の「悪魔」が育っていったところに、この事件の恐ろしさはあります。

私たち人間の心の中には、人間の数だけ「悪魔」が潜んでいることを、肝に銘じなければなりません。

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