稀代の個性派女優として活躍した、樹木希林(きき・きりん)さん。
実は、「住宅情報誌を読むのが趣味」と話すほど不動産が趣味で、不動産オーナーとしても知られていました。
相続はスムーズに進んだのでしょうか?
今回は、そんな希林さんの相続のケースを考えてみたいと思います。
◆不動産の総額は10億円超
樹木希林さんが関与していた不動産は、総額で10億円を超えると言われています。
報道ベースで分かっている内訳は以下の通りです。[1][2]
所在地 | 物件 | 面積 | 築年数 | 評価額 | 使用用途 | |
① | 港区西麻布 | 戸建て | 131.3㎡ | 40年 | 2億7,252万円 | フランス料理店などに賃貸 |
② | 渋谷区南平台町 | 戸建て | 385.8㎡ | 17年 | 7億966万円 | 2世帯住宅として希林・也哉子夫妻が居住 |
③ | 不明 | 戸建て | – | – | – | 不明 |
④ | 不明 | 戸建て | – | – | – | 不明 |
⑤ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 175.5㎡ | 47年 | 1億946万円 | 内田裕也が居住 |
⑥ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 60.5㎡ | 47年 | 3,587万円 | 個人に賃貸 |
⑦ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 132.5㎡ | 47年 | 8,320万円 | 個人に賃貸 |
⑧ | 渋谷区南平台町 | マンション | 122.5㎡ | 10年 | 2億3,430万円 | 個人に賃貸 |
◆法定相続人
樹木希林さんは、1973年10月にロックミュージシャンの内田裕也(うちだ・ゆうや)さんと結婚しました。
しかし、DVを理由にわずか1年半で別居すると、その後40年以上別居状態が継続。
一方で、2018年に亡くなるまで、離婚はしませんでした。[3]
この場合、実態として婚姻関係が続いているとは言い難いものがありますが、相続権はどうなるのでしょうか?
結論として、長期間の別居状態は、相続権に影響を与えません。
内田裕也さんは、配偶者として当然に相続権を持つことになります。
次に、相続権を持つのは、一人娘の内田也哉子(うちだ・ややこ)さん。
もう一人います。
也哉子さんの夫で俳優の、本木雅弘(もとき・まさひろ)さんです。
通常、子の配偶者は法定相続人とはなりません。
しかし、実は本木さんは、希林さんと養子縁組をしているのです。[2]
よって法定相続分は、
- 内田裕也さん…2分の1
- 内田也哉子さん…4分の1
- 本木雅弘さん…4分の1
となります。
◆相続の結果
それでは、不動産の相続の結果を見てみましょう。
所在地 | 物件 | 相続前所有者 | 相続後所有者 | |
① | 港区西麻布 | 戸建て | 樹木希林 | 内田也哉子 |
② | 渋谷区南平台町 | 戸建て | オフィス本木(1/2) 樹木希林(1/2) |
オフィス本木(1/2) 内田也哉子(1/2) |
③ | 不明 | 戸建て | 樹木希林 | 内田也哉子 |
④ | 不明 | 戸建て | 樹木希林 | 内田也哉子 |
⑤ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 希林館 | 希林館 |
⑥ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 樹木希林 | 内田伽羅 |
⑦ | 渋谷区富ヶ谷 | マンション | 樹木希林 | 本木雅弘 |
⑧ | 渋谷区南平台町 | マンション | 本木雅弘(1/2) 内田也哉子(1/2) |
本木雅弘(1/2) 内田也哉子(1/2) |
多くは、希林さん名義の不動産を、娘の也哉子さん名義に切り替えています。
⑥のマンションは、孫の伽羅(きゃら)さん名義になっているので、遺贈(遺言による贈与)をしたのでしょう。
しかし、孫への遺贈は、相続税が2割増しになるケースがあるので、注意が必要です。
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
(第2項省略)
◆夫・内田裕也には渡さない「思いやり」
このケースの特徴的なところは、配偶者である内田裕也さんに、遺産が全く渡っていないことです。
希林さんは生前、
お金があったら一晩で全部使っちゃうから、夫には遺産を残さない
と話していたと言います。
やはり、40年超にわたる別居生活に、感情的なしこりが残っていたのでしょうか?
いいえ、実際には逆で、「不動産」の管理は破天荒な内田さんの性分に合わないから、煩わしさがない「現金」のみを残していたと見られます。
また、相続時点で79歳だった内田さんに、残された人生は長くありません。(実際に半年後に死去)
不動産の相続手続きを2度行う事は、関係者に負担となるので、あえて内田さんに名義変更をしなかったのでしょう。
◆まとめ
樹木希林さんは、
- 祝儀・不祝儀は3,000円
- 荷物が増えるから贈り物はもらわない
- がんになっても慌てず、最期まで前向きに
など「生き方上手」だったと言われます。
その相続も見事で、死の2か月後には不動産の名義変更が済んでいたそうです。
残された家族が、揉めたりせずに済んだところは見習いたいですよね。
「死に方上手」と言っては、天国の希林さんに怒られそうですが…
◇脚注
- マネーポスト 2019年2月13日 樹木希林さんにみる「賢い相続」 空き家は賃貸に、会社も名義変更
- 週刊現代 2019年5月6日 樹木希林さんは生前、ここまで準備してあの世に旅立った
- スポーツ報知 2017年5月21日 樹木希林、「別居50年」の内田裕也と離婚しない理由は…
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