関西で絶大な人気を誇った、歌手・タレントのやしきたかじんさん。
たかじんさんの相続はもめる要素が多く、当時、多くのマスコミを賑わせました。
そこで今回は、たかじんさんの相続のケースを考えてみたいと思います。
◆相続人は最初の妻の娘と3番目の妻
やしきたかじんさんは生前、3回結婚しています。
- 最初の妻とは20代前半に離婚
- 2番目の妻は15歳年下の和服モデルで、2006年に離婚
- 3番目の妻は、亡くなる3ケ月前に結婚
子供は、最初の妻との間に娘が一人だけいました。
そしてたかじんさんは、3番目の妻との婚姻中に亡くなりました。
この場合、法定相続人は「最初の妻の娘」と「3番目の妻」の合計2人となります。
◆遺言書の内容
遺産は通常、法定相続人に渡りますが、遺言書がある場合は、遺言の内容が優先します。
たかじんさんの遺言書には、
・2億円を『OSAKAあかるクラブ』に寄付する
・3億円を大阪市に寄付する
・1億円を母校の桃山学院に寄付する
・4億円をA子(3番目の妻)に相続させる
とありました。[1]
つまり、娘の相続分はゼロだったわけです。
しかも、遺言書の作成方法は、生命の危険が迫っている病者等のための特別方式の遺言(一般危急時遺言)であったと言われています。
1.疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2.(以下省略)
遺言作成のための証拠として残されたビデオには、意識がもうろうとするたかじんさんの姿が…
これでは、娘さんもなかなか納得できないでしょう。
◆遺留分減殺請求
結論として、娘さんは「遺留分減殺請求」を起こしました。
遺留分とは、遺言で排除された法定相続人にも最低限認められている遺産の権利のことです。
このケースでは遺産金額の4分の1(2億5000万円)が娘に認められます。
そして、相続や寄付を受けた人たちに対し、遺留分に相当する金銭の支払を請求することができるのです。
報道ベースでは、大阪市とOSAKAあかるクラブに遺留分減殺請求を起こし、それぞれ寄付金からの一部返還を受けています。[1][2]
◆遺言執行者は吉村知事!
ちなみに、生前のたかじんさんの顧問弁護士をつとめていたのは、現在大阪府知事をつとめる吉村洋文(よしむら・ひろふみ)さんです。[3]
相続にあたっては遺言執行者に指名され、たかじんさんの遺志=3番目の妻の意を受けた立場で辣腕を振るった吉村さん。
- たかじんさんの個人事務所から実印や通帳、帳簿類や契約書などを持ち出した
- 娘に対して遺留分を放棄するよう迫った
などと強引に動いた姿が報じられています。
しかし、たかじんさんのマンションにあった現金1億8000万円を、3番目の妻より、
元々私のものだったことにしてほしい
と要請され、これを拒否。
結局、3番目の妻からも、遺言執行人を解任されてしまいました。
◆まとめ
という訳で今回は、やしきたかじんさんに関する相続トラブルを見てきました。
たかじんさんは生前、ただ一人の娘をたいそう可愛がっていたといいます。
再婚したとはいえ、ここまで豹変するのは不自然ですよね。
報道に出ていない事実がほかにあるのでしょうか。
相続というモノは、当事者にしかわからない事情があるものなのです。
◇脚注
- 産経WEST 2016年11月25日 たかじんさんの遺産、大阪市に2億円寄付 「うめきた2期」再開発に充当も
-
LITERA 2015年11月5日 維新の大阪市長候補は『殉愛』騒動でたかじんの遺言執行人として動いた人物だった! さくら夫人と組み娘に相続放棄要請も
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