紀州のドン・ファンこと、野崎幸助(のざき・こうすけ)さんは、2018年5月に亡くなりました。
そして、3年後の2021年4月、元妻Sが野崎さんの殺害容疑で逮捕されています。
この場合、遺産相続はどうなるのでしょうか?
今回は、野崎さんの遺産相続を考えてみたいと思います。
◆遺産の総額は13億円
野崎幸助さんの遺産は、総額約13億円だったと言われています。[1]
内訳は次の通り。
数量 | 評価額 | |
土地 | 42筆 | 3,150万円 |
建物 | 36棟 | |
預貯金 | 7口座 | 3億492万円 |
有価証券 | 11銘柄 | 7億684万円 |
投資信託 | 2銘柄 | 2億6,524万円 |
自動車 | 8台 | – |
動産 | 絵画3点 壺1点 |
– |
振込払出証書 | 3銘柄 | 300万円 |
(合計) | 13億1,151万円 |
振込払出証書とは、郵便局などで換金ができる証書のことです。
上記の他に、金額が確定していない不動産や美術品などもあるそうです。
◆法定相続人は元妻と兄弟
野崎幸助さんは、生涯3度の結婚をしています。[2]
1人目は、銀座のホステス。
2人目は、六本木の元ホステス。
3人目は、殺人容疑で逮捕された元妻Sです。
奥さんの数は多いですが、どの奥さんとの間にも子供はいません。
また、野崎さんは7人兄弟の3男に当たります。
年齢的に、ご両親は亡くなられている可能性が高いでしょう。
ここまでの情報で考えると、野崎さんの法定相続人は、元妻Sと野崎さんの兄弟ということになります。
民法第887条第1項
被相続人の子は、相続人となる。
民法第889条第1項
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
民法第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
相続する割合は、
- 元妻S…4分の3(約9億7,500万円)
- 兄弟全員…4分の1(約3億2,500万円)
「遺産目当ての結婚」と揶揄された元妻でしたが、言葉通り、巨額の遺産を手にすることになるのでしょうか?
しかし、そうは問屋が卸しませんでした。
◆遺言で全額を田辺市へ寄付
野崎幸助さんの死亡から1年以上経った、2019年9月。
和歌山県田辺市は、
野崎さんが全財産を市に寄付するとした遺言書が見つかり、遺産を受け取る方針である
と発表しました。[3]
野崎さんは、Sと結婚する前の2013年2月に、上記の遺言書を作成していたのです。
田辺市は、遺言書が形式的な条件を満たしており、市が遺産を受け取れる立場であることを確認しています。
遺言には「全財産を」と書かれています。
元妻Sには1円も入らなくなるのでしょうか?
◆元妻Sは遺留分を請求
実は、こういうケースでも、妻がすべての遺産を失うことはありません。
民法は、相続人の「遺留分」という最低限の取り分を認めているのです。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
この法律にのっとり、元妻Sは、遺留分を請求しています。
取り分は4分の3⇒2分の1へと減ってしまいますが、それでも6億5,000万円が手に入ります。
割を食ったのは野崎さんの兄弟で、4分の1⇒0になってしまいました。
野崎さんの兄は、
大の役人嫌いだった幸助が市に寄付するなんて書くわけがない。あの遺言書はデタラメです
と、反発。
兄弟で連携して遺言書の無効を求め、和歌山地裁に提訴しています。[4]
◆元妻は殺人容疑で逮捕
話はさらなる展開を見せます
野崎幸助さんが亡くなって3年が経過した2021年4月、和歌山県警は元妻Sを、野崎さんの殺害容疑で逮捕しました。
殺害方法は薬物を使用したとされていて、野崎さんから離婚を切り出されていたことを犯行動機としています。[5]
殺人罪が確定した場合、元妻Sは相続権を失うこととなります。
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 以下省略
遺産が目的で結婚し、結局、遺産を手に出来ないとは、皮肉な結果としか言いようがありませんね。
◆まとめ
というわけで今回は、野崎幸助さんの遺産相続の経緯を考えてきました。
元妻Sの逮捕を、野崎さんは空の上から、どのような気持ちで見ているのでしょうか。
法律上、事態が決着することによって、故人の感情も整理できればいいですね。
ご冥福をお祈り申し上げます。
◇脚注
- 週刊朝日 2019年9月17日 紀州のドン・ファンの全財産が記録された田辺市の報告書【独占全文入手】
- 週刊文春 2021年4月28日号 「紀州のドン・ファン」怪死事件 逮捕された“セレブアピールの強い20代妻”の素性
- 産経新聞 2019年11月8日 紀州のドン・ファン遺産13億円どうなる?相続の田辺市に難問
- JCASTニュース 2019年4月28日 どうなる「紀州のドン・ファン」13億遺産の行方 元妻逮捕の影響は?親族側弁護士に聞いた
- 毎日新聞 2021/4/28 紀州ドン・ファン「もう別れる」 事件直前、元妻と関係悪化か
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