両親が持ち家に住んでいた場合、実家を相続するという事態は、割と発生するものです。
相続はとつぜん始まります!
今回は、実家を相続した時にとるべき、4つの手段を考えていきます。
◆プロローグ~実家を相続するまで
相続が開始(親が死亡)され、実家を相続するまでに行う手続きは、5つほどあります。
- 遺言の確認
- 相続人の確定
- 相続財産を確定
- 遺産分割協議
- 相続登記
相続するまでの手続きはこちらの記事をご参照ください
◆実家を相続した時にとるべき4つの手段
では、相続で実家を相続したとき、相続した人はどうしたら良いのでしょうか?
当記事では、実家を相続したときにとるべき手段は、
① 売って処分する
② リフォームして賃貸する
③ 実家に引っ越して住む
④ 空き家にしておく
という4パターンだと考えています。
順番に説明していきます。
①売って処分する
メリット | デメリット |
|
|
(ⅰ)メリット
実家は遠くて目が届かないから…
相続人(子供)が遠方に住んでいるなどで、実家を活用できないケースも多いと思います。
不動産は分割することが難しいので、兄弟がいる場合は、分け前でもめる原因にもなります。
こういう場合、一番シンプルな方法が、実家を売って処分してしまうことです。
実家を売るメリットは、何といってもまとまったお金が手に入ること。
子供の教育費などにお金が必要な世代だったら、まとまったお金は助かりますよね?
現金であれば、兄弟で分配しやすいので、分け前で揉めるリスクも排除できます。
孫のためになって、子供たちが揉めない…
ある意味、被相続人(両親)も、この方法を一番望んでいるかもしれませんね。
実家を売却する手順は、普通に不動産を売る手順と変わりません。
① 不動産会社を探す
⇩
② 媒介契約を結ぶ
⇩
③ 販売活動
⇩
④ 実家の内覧
⇩
⑤ 価格の交渉
⇩
⑥ 不動産売買契約
⇩
⑦ 決済・引き渡し
実家の売却については、別の記事で詳しく解説しています
(ⅱ)デメリット
実家を売る場合、注意すべきポイントは税金です。
不動産を売却して利益が生じた場合、所得税・住民税がかかります。
所有期間が5年超の長期譲渡所得…20.315%
実家を相続するケースでは、被相続人(親)の取得日を引き継ぐことができるので、普通は長期譲渡所得になると思います。
税金は「利益」に対して課税されます。
両親が2,000万円で買った不動産を3,000万円で売った場合、利益は1,000万円ですね。
この場合、200万円くらいの税金がかかります
しかし、当時の契約書などを紛失していて、2,000万円で買ったことを証明できないこともありますよね?
このときは、3,000万円の5%が取得価格と見なされるので、2,850万円が利益と認定されてしまいます。
この場合、570万円くらいの税金がかかります
税金が大きく違ってくるので、注意が必要です。
税金については、こちらの記事で詳しく解説しています
また、実家を売りだしたからと言って、すぐに買い手がつくとは限りません。
特に地方の場合、買い手が見つからないことの方が多いかもしれません
こんな時はまず、不動産会社を見直してみましょう
売り出しを頼んでいる不動産会社は、どんな会社ですか?
大手の不動産会社は安心できますが、どうしても都会の金額が大きい案件に目が行きがちです。
地方の実家の場合、地域の不動産会社に相談するのが良いでしょう。
地元で実績がある不動産会社が良いと思いますが、当たり外れが大きいので、複数の会社の話を聞いてみることをお勧めします。
次に、リフォームを検討しましょう
買ってもらうためには見た目も大事なので、目につく部分を中心としたリフォームも有効です。
しかし、リフォーム代金はどうしても売却価格に跳ね返ってきます。
そして買い手は、自分好みにリフォームしたいかもしれません。
リフォームして売り出すことを検討するときは、上記のことも十分考慮する必要があります。
建物を取り壊すという選択肢もあります
実家を解体し、更地として売り出した方が、買い手が見つかりやすくなるケースもあるでしょう。
この場合、まず解体費用がかかります。
解体費用の相場は、木造住宅の場合、坪当たり3~5万円と言われています。
さらに、建物を取り壊すと、土地の固定資産税の軽減措置が使えなくなるので、注意が必要です。
②リフォームして賃貸する
メリット | デメリット |
|
|
(ⅰ)メリット
思い出のある実家を手放すのは忍びないな…
実家と言えば、両親の思い出が詰まっていて、なにより相続人自身が子供のころから住んでいたもの。
他人の手に渡るのは寂しいですよね?
あるいは、すぐには難しくても、定年退職後には地元に戻り、実家に住もうと考えている方もいるかもしれません。
こういう場合は、賃貸するという方法が考えられます。
うまく借り手が見つかれば、継続的な家賃収入が見込めます。
実家を手放すことなく、うまく行けば売却以上の収入が得られる場合もあります。
借り手を探すときは、売るときと同様、実家のエリアにある不動産会社に相談するのが良いでしょう。
(ⅱ)デメリット
実家を賃貸する場合、注意すべきポイントは「手間もコストもかかること」です。
物件が実家であろうが、家賃収入を得る以上、それは不動産賃貸業というビジネスです。
「高額不労所得」などという夢は捨ててしまった方が良いでしょう。
まずは借り手がいないと話にならないので、不動産会社にマメに連絡をとり、早く入居者を探してもらう必要があります。
入居者が入ったら、退去されるリスクを抑えるため、入居者の満足度を考える必要があります。
帳簿をつけて、確定申告もしなければいけませんね
そもそも最初に賃貸に出すときは、リフォームが必要となるでしょう。
キッチン、トイレ、浴室、壁紙などで、最低でも100万円はかかると思います。
電気・水道・ガス・雨漏りなどのメンテナンスも必要です。
借り手が退居して、次の入居者を入れるときには、ハウスクリーニングが必要となります。
さらに、物件の維持管理や、毎月の入金管理(金額が合っているか、入金遅れはないか)、クレーム対応などの業務が発生します。
実家が遠方である場合は不動産会社に依頼する事になりますが、月額1~2万円の出費となります。
③実家に引っ越して住む
メリット | デメリット |
|
|
(ⅰ)メリット
実家を相続したことをきっかけに、実家に移り住む方もいます。
会社員生活も一区切りを迎え、子供も独立する年代なので、
老後は地元で過ごしたいな…
と考えることは自然な成り行きでしょう。
自分を育ててくれた地元で、かつて慣れ親しんだ実家で、余生を過ごす…
実家に移り住むことで、人生の後半戦を飾るに相応しい舞台に上がることができるのです。
(ⅱ)デメリット
実家に引っ越して住む場合の注意点は、パートナーの気持ちでしょうか。
独り身の方は問題ありませんが、パートナーがいる場合は、よくよく話し合う必要があります。
あなたにとっては懐かしい地元や実家の建物でも、パートナーにとってはただの見知らぬ土地であり、古びた家に過ぎないのです。
表向きは反対していなくても、内心は不安を抱えているかもしれません。
そうして実家に引っ越すことが決まったら、あとは準備ですね。
賃貸のときと同様、電気・水道・ガス・雨漏りなどのメンテナンスや、水回りのリフォームは必要となるケースもあるでしょう。
売却、賃貸ともに共通しますが、相続登記を確実に行い、名義を自分に変えることも忘れないようにしたいです。
兄弟がいる場合は、自分だけが実家を取ることになるので、揉める原因となります。
このような場合は、金銭などで「代償分割」をすると、後々スムーズになると思います。
④空き家にしておく
メリット | デメリット |
|
|
(ⅰ)メリット
気持ちの整理がつくまでは…
売る、賃貸する、住む…これらのいずれにも踏み出せないケースでは、空き家にしておくことになります。
または、売却・賃貸する方針でも、買い手・借り手が見つかるまでは、やはり空き家として管理する事になるでしょう。
空き家にしておく動機は消極的なものですが、とりあえず実家を自分たちのものとできるメリットはありますね。
(ⅱ)デメリット
空き家にしておく注意点は、何点かあります。
一点目は、空き家の維持コストがかかることです。
一般的に空き家には、固定資産税や火災保険料などが必要です。
もちろん空き家以外でも維持コストが必要なケースはありますが、空き家の場合は、家賃が入ってくるなどの「便益」がないため、コストだけが出ていくことになります。
二点目は、資産としての価値が減少することです。
建物は毎年、減価償却されるので、価値がどんどん下がっていきます。
土地は建物ほどは価値が減少しませんが、地方の地価は毎年下落しています。
三点目は、所有者責任の問題です。
空き家の所有者は、民法717条により、損害賠償責任が課されています。
例えば、空き家のブロック塀が倒れて誰かにケガをさせた場合、その損害は建物の使用者に請求されるのです。
四点目は、特定空き家に指定されるリスクです。
2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」という法律ができました。
この法律により実家が「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税等の軽減措置がなくなったり、実家の修繕や撤去を命じられたりします。
以下の記事で詳しく解説しています
◆まとめ
という訳で今回は、実家を相続した場合の4つの手段を見てきました。
① 売って処分する
② リフォームして賃貸する
③ 実家に引っ越して住む
④ 空き家にしておく
それぞれにメリット・デメリットがありましたね。
実家の立地条件や兄弟・配偶者の有無、他の相続財産など、色んなパターンが考えられるので、自分に一番合う手段を考えることが大切です。
ご質問がありましたら、お気軽にコメントください
コメント