両親が持ち家に住んでいた場合、実家を相続するという事態は、割と発生するものです。
相続はとつぜん始まります!
今回は、実家を相続するのに必要な手続きやスケジュール、各種の税金、相続後の活用方法などをご紹介していきます。
◆必要な手続き
相続が開始され、実家を相続するまでに行う手続きは、5つほどあります。
最初に、相続が発生したら、つまり両親が亡くなったら、まず遺言の存在を確認します。
遺言があった場合、基本的には遺言に従って財産を分けることになります。
遺言が無ければ、後に行う遺産分割協議の内容によります。
次に、相続人を確定させます。
遺言がある場合は、遺言に記載がある人が相続人です。
遺言がない場合は、民法で法定相続人が定められています。
三番目に、相続財産を確定させます。
不動産は、市役所等で故人の名寄帳を取り、それをもとに、被相続人名義の固定資産評価証明書を交付してもらいます。
預金・借入金は、取引がありそうな金融機関に残高証明書を発行してもらえば、一覧で把握することができるでしょう。
有価証券類は取引のある証券会社に確認するほか、車や貴金属などの動産は、目につくものを目録にまとめるようにします。
四番目に、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、誰がどの財産をどのように譲り受けるかを決めるものです。
100%遺言の通りに遺産を分けるのであれば、遺産分割協議は不要となります。
最後に、相続登記を行います。
相続登記は義務ではありませんが、これを確実にやっておかないと、売ったり貸したりすることができなくなります。
後々、相続人の間でもめる事態を防ぐ意味でも、相続登記はしっかりとやっておきましょう。
必要な手続きについては、こちらの記事で詳しく説明しています
◆実家を兄弟で分ける方法
相続した実家は簡単に分割できないので、もめごとが起こりやすいものです。
相続した実家を分ける方法は、以下の4通りあります。
①現物分割
現物分割とは、1つ1つの財産を、各相続人が個別に相続する方法です。
相続財産が、複数の不動産や上場株式、現預金など多岐にわたる場合、有効な相続方法といえます。
一方で、相続するのは実家の土地建物のみ…といった場合は、使いにくい方法と言えるでしょう。
②代償分割
代償分割とは、相続人の1人が実家を引き継いで、それに見合うお金を他の相続人に支払う方法です。
実家が他人の手に渡らないのがメリットですが、実家を受け継いだ人はまとまった現金が必要になります。
③換価分割
換価分割とは、実家を売って現金に換えた上で分割する方法です。
最終的にお金を分割するので、公平に分けられることがメリットです。
一方で、思い出深い実家が他人の手に渡るのが、最大のデメリットでしょうか。
④共有
共有とは、実家の土地・建物を共同名義にしてしまう方法です。
このやり方は、実家が子供たちの手に残るうえに、公平に分ける事ができます。
良い方法に思えますが、権利関係が複雑になるので、あまりお勧めできません。
こちらの記事で詳しく解説しています
◆全体スケジュール
実家の相続には、抑えておくべきスケジュールがあります。
まず、被相続人の死亡から7日以内。
これは、死亡届の提出期限になります。
提出先は市区町村の役場で、同居の親族、親族以外の同居人、故人の住居の家主や地主、後見人などが提出しなければいけません。
次のスケジュールは、3ヶ月以内。
これは、相続放棄と限定承認の申述の期限です。
相続は、プラスの財産(実家の土地建物など)だけではなく、マイナスの財産(借金)も引き継いでしまいます。
そこで、明らかに借金の方が多い場合は、相続人は相続放棄を選んだ方が有利となります。
また、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合、「プラス財産を超えない範囲に限りマイナス財産を相続する」というのが限定承認です。
次のスケジュールは、4ヶ月以内。
これは、所得税の準確定申告の期限となります。
準確定申告とは、亡くなった人の所得に関して、法定相続人などが確定申告を行う手続きです。
「亡くなった前年の所得に対する確定申告」と「亡くなった年の所得に対する確定申告」の2つのパターンがあります。
最後にご紹介するのは、10ヶ月以内。
これは、相続税の申告・納付期限となっています。
期限を過ぎてしまった場合、延滞税や加算税が付加されることになります。
「延納」という制度もありますが、これは担保を提供する代わりに、税金を分割で支払うものです。
相続税の物納・延納の期限も10ヶ月となっています。
スケジュールに関する詳しい記事はこちら
◆各種税金
実家を相続したり、売却した時には、4種類の税金を支払うことになります。
①相続税
まず、実家を相続したときは、相続税を考える必要があります。
しかし、法定相続人に当たる人が相続する場合には、基礎控除額が大きいので、ほとんどのケースでは相続税は発生しません。
②譲渡所得税・住民税
次に、実家が売れた時は、譲渡所得税と住民税を考える必要があります。
これは、実家を売ったことで利益が発生(売却価格が取得価格を上回る)した場合に、利益に対して税金がかかるものです。
取得価格には、被相続人(親)の購入金額や、相続税の一定金額を合計して計算します。
③登録免許税
登録免許税は、相続登記のときに必要となります。
亡くなった人の名義では不動産の売却ができないため、所有権を相続人へ変更することが必要です。
このとき、不動産の評価額の0.4%を税金として納めることになります。
④収入印紙税
不動産の売買契約書には、収入印紙を貼ることによって税金を納める必要があります。
印紙税の額は契約金額によって異なります。
契約金額が1,000万円超~5,000万円以下の場合、印紙税は10,000円です。
税金に関する詳しい記事はこちら
◆相続後の活用方法
では、相続で実家を相続したとき、相続した人はどうしたら良いのでしょうか?
私は、実家を相続したときにとるべき手段は、
① 売って処分する
② リフォームして賃貸する
③ 実家に引っ越して住む
④ 空き家にしておく
という4パターンだと考えています。
順番に見ていきましょう。
①売って処分する
相続人(子供)が遠方に住んでいるなどで、実家を活用できないケースも多いと思います。
不動産は分割することが難しいので、兄弟がいる場合は、分け前でもめる原因にもなります。
こういう場合、一番シンプルな方法が、実家を売って処分してしまうことです。
実家を売るメリットは、何といってもまとまったお金が手に入ること。
子供の教育費などにお金が必要な世代だったら、まとまったお金は助かりますよね?
現金であれば、兄弟で分配しやすいので、分け前で揉めるリスクも排除できます。
ある意味、被相続人(両親)も、この方法を一番望んでいるかもしれませんね。
実家を売却する手順は、普通に不動産を売る手順と変わりません。
注意すべきポイントとしては、税金がかかること。
また、すぐに売れるとは限らないので、時間的余裕を見ておく必要があります。
実家の売却については、別の記事で詳しく解説しています
②リフォームして賃貸する
実家と言えば、両親の思い出が詰まっていて、手放すのは忍びなかったりします。
また、定年退職後には地元に戻り、実家に住もうと考えている方もいるかもしれません。
こういう場合は、賃貸するという方法が考えられます。
うまく借り手が見つかれば、継続的な家賃収入が見込めます。
実家を手放すことなく、うまく行けば売却以上の収入が得られる場合もあります。
注意すべきポイントは「手間もコストもかかること」です。
不動産会社にマメに連絡をとり、早く入居者を探してもらう必要があります。
入居者が入ったら、退去されるリスクを抑えるため、入居者の満足度を考える必要があります。
帳簿をつけて、確定申告もしなければいけません。
そもそも最初に賃貸に出すときは、リフォームが必要となるでしょう。
キッチン、トイレ、浴室、壁紙などで、最低でも100万円はかかると思います。
電気・水道・ガス・雨漏りなどのメンテナンスも必要です。
実家の賃貸については、こちらの記事で詳しく解説しています
③実家に引っ越して住む
実家を相続したことをきっかけに、実家に移り住む方もいます。
会社員生活も一区切りを迎え、子供も独立する年代なので、「老後は地元で過ごしたい」と考えることは自然な成り行きでしょう。
実家に引っ越して住む場合の注意点は、パートナーの気持ちでしょうか。
あなたにとっては懐かしい地元や実家の建物でも、パートナーにとってはただの見知らぬ土地であり、古びた家に過ぎないのです。
表向きは反対していなくても、内心は不安を抱えているかもしれません。
賃貸のときと同様、電気・水道・ガス・雨漏りなどのメンテナンスや、水回りのリフォームは必要となるケースもあるでしょう。
売却、賃貸ともに共通しますが、相続登記を確実に行い、名義を自分に変えることも忘れないようにしたいです。
兄弟がいる場合は、自分だけが実家を取ることになるので、金銭などで「代償分割」をすると、後々スムーズになると思います。
実家に住む場合の注意点は、こちらの記事で詳しく解説しています
④空き家にしておく
売る、賃貸する、住む…これらのいずれにも踏み出せないケースでは、空き家にしておくことになります。
または、売却・賃貸する方針でも、買い手・借り手が見つかるまでは、やはり空き家として管理する事になるでしょう。
空き家にしておく動機は消極的なものですが、とりあえず実家を自分たちのものとできるメリットはありますね。
空き家にしておく注意点は、維持コストがかかることです。
もちろん空き家以外でも維持コストが必要なケースはありますが、空き家の場合は、家賃が入ってくるなどの「便益」がないため、コストだけが出ていくことになります。
また、空き家にしておくと、建物が痛み、地価も減少するケースが多く、資産としての価値が減少していきます。
空き家特有の「所有者責任」の問題もあります。
例えば、空き家のブロック塀が倒れて誰かにケガをさせた場合、その損害は建物の使用者に請求されるのです。
また、実家が「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税等の軽減措置がなくなったり、実家の修繕や撤去を命じられたりすることも考えられます。
以下の記事で詳しく解説しています
◆実家の片付け
相続した実家は、そのままでは売ったり貸したりできません。
必ず「片付ける」という作業が発生します。
その際、遺品は3つの種類に分類して考えると、うまく運んでいくでしょう。
1つ目の分類は、絶対捨ててはいけないもの…貴重品です。
通帳、印鑑、有価証券、権利書、宝石・貴金属類などが該当します。
これらの貴重品は相続財産を構成するので、取り扱いには注意しなければなりません。
2つ目の分類は、捨てるものと捨てないものに分かれるもの…思い出の品です。
日記、手紙、写真、賞状・トロフィー、人形などが該当します。
これらは、分量や保管状態によって選別していくのが良いでしょう。
手紙や写真、賞状などは、差出人や写っている人、主催団体を「知っているか?」が、選別のポイントとなります。
また、人形やぬいぐるみは、神社やお寺で供養してもらうことができます。
3つ目の分類は、ほとんどを売るか捨てることになるもの…処分する品です。
本、CD・DVD、家具、電化製品、衣服、食器などが該当します。
これらはかさばるものが多いので、いかに処分できるかが、実家片付けの成功の秘訣と言えます。
基本的には、可能なものは買い取り業者に引き取ってもらい、引き取りできないものは捨てることになります。
以下の記事で詳しく解説しています
◆まとめ
という訳で今回は、実家を相続した場合にやるべきこと、考えるべきことをご紹介してきました。
実家の立地条件や兄弟・配偶者の有無、他の相続財産など、色んなパターンが考えられるので、自分に一番合う手段を考えることが大切です。
ご質問がありましたら、お気軽にコメントください
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